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「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの」
怒られることを覚悟した少女だったが、予想に反して、男は彼女の頭をぽんと軽く叩いただけだった


すっと差し出されたボール。
少女は顔を上げた。こわもてがやたら近い。わざわざ身を屈めているのだと気づくには、もう少し時間がかかった。


「あ、ありがとうございます」
礼を述べて手を差し出した。
「すみません、当てるつもりはなかったんです」
それと、先刻のお詫びも慌てて。


日がビル街に沈む刻限、この公園にくるのが最近の少女の日課だった。
公園といっても目立った遊具はない。的の描かれたコンクリートの壁があるだけ。
けれど、少女にはそれで十分だった。


「ここ数日、毎日来てるじゃないか」
謝罪には直接応じず、男は険のある眼差しをすいと壁に向けた。
「一人キャッチボールか?」


「ちょっと貸してみろ」
反応に困ったのか、黙ってしまった少女の手から再びボールをつまみあげ、男は何気なくそれを壁へと放った。

パシッ、音がした位置はずいぶんと高かった。
遠く、緩やかに向こう側に吸い込まれる軌跡を想像して、少女はため息をついた。


「もっと体全体を使って投げるんだな。姉ちゃんのはあれだ、上半身だけで投げてる。そんなんじゃ飛ばねぇ」


それでもなお続く沈黙に、耐えきれないというかのようにわしわしと男は頭をかいた。
「信じろい。これでも昔は、エースピッチャーだったんだぜ」


真っ直ぐに育った若木のような少女と、お世辞にも堅気には見えない男。
端から見たら、やれ恐喝かかどわかしかと思われるだろう。けれどねじれた唇から出てきたのは、エースピッチャーという華やかな、どこかしみじみとした響きで。


その落差がおかしくて、少女は笑いだしてしまった。まるで出来すぎたお話のよう。
この際、それが嘘か本当かは別問題だった。


「毎日見てくれてたなら、うまく投げれるよう、これからコーチしてくれませんか」
そんな展開に甘えて、少女は軽口をたたいてみた。
男はそれはもう情けないほど崩れた顔をしたが、すぐに背中を向けると二歩三歩と足を動かした。


「あの…」
「バカ言うな」
身をすくませるようなドスのきいた声が返ってきた。


「これからとか、軽く未来を口にすんな。ないかもしれねぇ明日明後日を考える暇があるなら、今をせいぜい生きるんだな」


はき捨てた男は、勢いあまったのかついでのように一言。
でないと、俺みたいになっちまうんだよ」


ぽつんと呟いたそれが、複雑な色をのせていたことに、果たして少女は気づいたかどうか。


立ちすくむ少女の視界の先、ビルの影に白いスーツが吸い込まれていった。
きれいな放物線を描いた白球とはかけ離れた、ひどくいびつな姿だった。
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2010.07.17 Sat l 未分類 l コメント (5) トラックバック (2) l top
「姉ちゃん・・・・・・こんなんで飛ぶと思ってんの?」
修正を繰り返し汚れた紙に引かれた設計図を眺めて少年が呟いた。
「飛ぶわ。私なら飛ばせるの。いい?私は貴方がママのおっぱい吸ってる頃にはもう、操縦桿を握っていたわ。貴方とは経験も知識も違うのよ。いい子だから黙って言うとおりになさい」


それだけ捲くし立ててから、少年の機嫌を損ねないように帽子を被ったカーリーヘアを撫でる。
「信用しているのよ?貴方の腕を。お願いね可愛い設計士さん」
添えられた微笑みに眩しさを覚えて、視線を逸らした。
「っ……か、金は貰ってるからやるよ!けど、飛ばない船になっても返さないからな!?」


「もちろん、返さなくていいわ。だって、貴方なら私の言うことを聞きながら飛ばせるように引いてくれるでしょう?頼んだわよ?それじゃあ、私は休むわ」
髪をかき上げながらおやすみなさい、と立ち去る背中を見つめながらため息をついた。
「言ってることが無茶苦茶だよ……」
と再度、設計図を見返した。


「…… ギリギリ、だよ。ホント……あーもー」
頭を抱えて天井を仰ぐ。彼女は有名人だ。『女だから』『腕がいいから』『美人だから』『空賊だから』総てだ。ただでさえ飛空挺に女が乗るのが稀なのだ。空で生まれ、空で育った彼でさえ、女船長など彼女の存在を知るまで聞いたこともなかった。


当然、彼女を好まない人間も多かった。
賊同士の諍いで原型を留めぬほどボロボロになった彼女の船の修理が、立ち上げたばかりの小さな造船所に舞い込んだのはそれがおおきな理由なのだろう。
名前を売るには充分すぎる仕事だった。ふと、4日前に彼女が依頼に来た日を思い出す。


長い髪は焼け焦げて、衣服は乱れたままで、死にかけの船員を担いでなお、彼女は――彼女の瞳は揺ぎ無く、翼を要求した。
その姿に、心を動かされない飛空挺技師がいただろうか。女であることを蔑むことのできる人間がいただろうか。


その姿と、先ほどの微笑みを思い返して胸が苦しくなった。
「………くそ、見てろよ」
帽子を被りなおしもう一度、設計図へと向かった。


翌朝、設計図を手に彼女の部屋の扉を叩いた彼を力強い抱擁と、キスの嵐が待ち受けていた。
戸惑い、照れる彼をよそに、子供のように目を輝かせながら喜んでいた。その日の空は、果てしなく青かった。


その日から、飛空挺の製造は急ピッチで進められた。
少年は一日々々、完成に近づく船を見ながら自身の仕事への確かな手ごたえを覚えた。
それと同時にもう一つ、別の感情があることに気付きながら、蓋をした。


彼女や、船員達の手伝いもあって一年足らずで飛空挺は完成した。
『こんな構造で飛ぶはずがない』といわれた船を彼女はテスト飛行でいとも容易く飛んでみせた。
引渡しの前夜、船員達が酒をあおる中、少年は彼女に呼ばれ二人で船を見上げていた。
「これで、また飛べるわ」
感慨深げに目を細めた。


その横顔に感情が溢れそうになった。少年は心の中で必死にそれを否定して、話す。
「満足だろ?船長さん。これでうちも一流造船所の仲間入りかなぁ」
帽子を深く被り、乾いたように笑う彼を彼女が抱き寄せる。
「……貴方には、感謝しているわ」
少年の頬に唇を落とし、ありがとう、と添えた。


翌日の出立を、少年は見送らなかった。『連れて行って』と言ってしまいそうだったからだ。
彼女を困らせることはしたくなかった。足の動かない自分では、邪魔なだけだと自身でわかっていた。
車椅子を引きずって、窓から空を見上げた。彼女の、瞳のように、果てしなく青かった。 
2010.07.15 Thu l 未分類 l コメント (0) トラックバック (2) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
俺は姉の銃口を見ていた、灰を落としてタバコを床に捨てた、禁煙糞喰らえだ
「姉ちゃん」
姉は引き金に指をかけ、俺は最後のタバコを咥えて火をつけた
「こんなんで飛べると、思ってたのか?」
銃声が聞こえて、姉は床に倒れた、タバコの煙がゆっくり上っていった
2010.07.15 Thu l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
背後から小馬鹿にしたような声が聞こえた。午前2時。高層マンションの屋上。
周りの夜景はまるで宇宙。振り返るとおとなしそうな青年が立っていた。彼の手には包丁が握られていた。


この屋上には私と彼の二人しかいない。イコール、助けなど絶対に来ない。
この状況から脱出するためには「彼をねじ伏せる」「屋上から飛び降りる」の2種類しかなかった。
だが投身自殺をするつもりは毛頭から無い。
私はあらかじめこのマンションにクライミング用のワイヤーを隠していた…はずだった。


「姉ちゃんが探してるのってコレかな?」
青年が切り刻まれたワイヤーを放り投げた。
「…用意周到だね。こんなの隠してたって事は、よっぽど僕のことが憎いんだ?」
彼の目は狂気を帯びていた。
「言わなくたって分かってるよ。姉ちゃんは僕の事殺しに来たんでしょ?」


私はゆっくりと口を開いた。
「…やっぱりあなたが殺したのね?」
女の声が、私の台詞を続けた。
「私の親も、ペットも、友達も、あなたのお兄さんも…どうして?どうして私じゃなくて私の周りの人たちだったの?!」
つい感情がこもってしまった。全員、この青年が手にかけた犠牲者だった。


「……きだったから。」
青年の声がか細くなった。
「…は?」
私は聞き返した。
「姉ちゃんが好きだったからだよ!!!!」
青年は声を張り上げた。


「初めて会ったときから僕は姉ちゃんが大好きだった!何度も『好き』って言っただろ!?あれは本気だったんだ!なのに姉ちゃんは笑ってまともに取り合ってくれなかった!!…兄貴も、姉ちゃんの知り合いもジャマばかりしてさ。僕は姉ちゃんと2人だけでいたいのに…。殺したくもなるじゃん。違う?」


あまりに身勝手な主張に、私は茫然とした。その間に彼は私のすぐそばまで来ていた。
いつの間にか私は屋上の端に追い詰められていた。
「…姉ちゃん、そういえば今日は違う男の匂いがするね。」
静かな声が聞こえた瞬間、脇腹に包丁がねじ込まれ、激痛が走った。 ……今しかない。


私は彼の腕をつかみ、彼の身体を一気に床にたたきつけた。
そのまま彼の首元を抑え、全体重を掛けていく。脇腹の包丁が更に身体を抉る。
彼に殺された人たちもこんな痛みを感じたのだろうか…。
私は彼の耳元で最後の言葉をかけた。
「…彼女は『さよなら』と言ってましたよ。」


青年の死を確認した後、私はボイスチェンジャーを調整し直し、依頼主に電話をかけた。
「仕事、終わりましたよ。」
電話の向こうで『姉ちゃん』が息をのんだ。私は事務的に会話を続けた。
「報酬は後日指定した口座に振り込んで下さい。それでは。」
…さて、今回はどうやって飛ぼうか。
2010.07.15 Thu l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
自信満々の姉にアタシは『心から疑っています』の意をたたきつけた。
「飛べるに決まってるじゃない!私は何度も見てるんだからね!」
ダメだ。コイツは考えを曲げそうにない…。


「いや、『見てる』って言っても姉ちゃんだけじゃん。」
「だったら何よ。」
「信用デキマッセーン。」
「むぅ…。」


姉ちゃんは口をつぐんだが、すぐに得意げな表情に戻った。
「でも他人が飛ぶのを見た事自体は事実ッ!」
「はぁ…。」
「あんたの好きそうなイケメンだったよ~?」
「いや知らんし。」
姉ちゃん、飛んでた人の顔までよく見えたな。


「まぁそこまで言うならもう止めないわ。」
どうせ言っても聞かんだろう。
「万が一成功したら教えてよね。あ、それと…」
「ん?何?」


「それ、箒じゃなくてクマデだから。」
2010.07.15 Thu l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
僕は尋ねる。
「飛べなかったらどうする?」
彼女はいたずらっぽく笑う。僕は小高い丘の上で、同じ問いを何度も彼女にぶつけていた。
僕らは明日、空に旅立つ運命にあった。それは僕らにとって希望に満ちあふれた出発であり、同時に一度しか無いチャンスだった。


「私はね、できるだけ高く飛びたいの!そうしてこの丘をとびだして、どんどん遠くへ飛んでって、そこで新しい生活を始めるの!」
彼女は嬉しそうに将来を語った。僕はうなずき、彼女の話を静かに聞いていた。
「…ねぇ、まだ不安なの?」
ふいに、彼女が尋ねてきた。


僕はそれを認めたくはなかった。周りは皆、旅立つことを楽しみにしていた。
僕一人だけが飛び立つことを怖がっていると思っていた。彼女は僕の答えを聞きたそうににやにやしている。
僕が黙り込んでしまったのを見て、周りの仲間たちまでが僕に注目し始めた。


「ふーん、へーえ、ほーお。答えられないということは、君はこのままここで一生を終えるつもりかな?それとも、私なんかに自分の理想を語る気はさらさらない、ということかな?」
彼女のその態度が腹立たしく思えた。生まれた時から一緒だったんだ。僕のことは分かっているだろう!


「なんでそんな能天気なんだよ。お前ら全員ワケ分かんねぇよ」
僕の声は震えていた。
「…だって、一人で飛んだことなんか今まで一度もないじゃないか!飛び立てずに落っこちて、そこで終わるかもしれないじゃないか!なのになんだよ!?お前ら全員楽観視しすぎだろう!!」
周りはしんと静まり返った。


姉ちゃんの笑いが消えた。
「…あんた、何言ってんの?」
もう彼女は笑っていない。しまった。地雷を踏んでしまったか。僕の体が強ばった。


「あたしだって怖いよ」
誰かが呟いた。
「俺もだよ」
「ボクだってそうさ」
周りの声が次第に多くなってきた。姉ちゃんがほほえんだ。
「怖いのはみんな同じに決まってるじゃない。でも行かなきゃいけない。なら一人で行くよりみんなで行く方が怖くないでしょ?皆で飛べるように励まし合ってるんじゃない」


僕はハッとした。
僕の周りの奴らだって条件は同じだったんだ。
なのに皆不安を感じていないふりをしてた。
僕だけが不安に囚われて、おいてけぼりを喰らったと思いこんでいたんだ。


姉ちゃんは続けた。
「誰かがずっと怖がってたら、皆も怖がって飛べなくなっちゃうでしょ?私たちはここで一緒に生まれ育ったの。…ここの皆なんて、もう兄弟じゃない。でしょ?」
いつのまにか空は明るくなっていた。僕は自分の体を見つめた。
ちっぽけな体だけど、どこまでも飛んでいけそうな気がした。


外は柔らかな春の日差し。風はおだやか。うってつけのフライト日和。
あとはちょうどいい風が来るのを待つだk…
「ぶちっ!」


「ママー!みてみてー!たんぽぽ!」
「ふわふわしてるねぇ。ふーっ!ってしてごらん」
「うん!」 ふーっ。 僕ら -タンポポの種子- は青空に向かって飛んでいった。  
『行ってきます!』
2010.07.15 Thu l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
「うるっさいな。飛べると思ってるからやってんでしょ」
「でも、もうかれこれ四日?同じことやって飛べてないよね」
「あんたには関係ないでしょ」


「くっそ、何で飛べないのコレ。何か間違ってんの…」
「…まだやってんの姉ちゃん」
「だからうるさい!!!ちょっと黙ってて。集中してるんだから。助走距離が足りないの…?タイミングが悪いの?両方?」


「姉ちゃんさあ、飛ぶためのどうぐ使わんの?」
「は?」
「ここ来る直前で貰わなかった?」
「え、何それ。知らない…」


「姉ちゃんちょい俺に貸して。……あのね、村出る前にここで長老に話し掛けるじゃん?そうするとね、貰えんの。ほれ、『飛翔の腕輪』ってやつ」
「あれえ……」
「で、それ装備してからね。飛んでみ」


「・・・・・・飛べた、ね」
「ね」


「ところでお前なんでコレ知ってんの」
「えっ」
「・・・・・・・私の知らないセーブデータがあるねえ…随分とレベルとプレイ時間が上の奴が…」
「あー。えーと」


「お前私がいない間にやったな?」
「なんのことかな」
「無断で私の引き出し漁ったな?」
「さあてね」
「おい私の目を見て話せ」
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
屋上の手すりに腕をあずけ、なんちゃって青春の1ページを満喫していた私に声をかけたのはクラスメイトのやまっち(10代男性)だ。
勘違いしないでいただきたいが姉ちゃんというのは私のアダナでしかなく、けしてこの男と血縁関係にあるわけではない。


ついでにいうとその珍妙な愛称もどきで呼ばれるようになったきっかけは腹立たしいことこの上ないので詳細を語りたくない。
だがしかしこの男と仲が悪いのかといえば否と言える程度の間柄というかぶっちゃけた話クラスメイトの中じゃ一番気が合う部類なんじゃねえの? と思える相手である。


だからこそ私は背中に全体重をかけてきてなおかつ肩ごしに手元を覗き込んでくるこの馬鹿に肘鉄をくらわせることなくそのまま青春ごっこを続けることができる。私の手のうちにはかわいそうなくらいシワシワの紙飛行機があるわけで、やまっちがコレを見た上で発言したのだということは容易に読み取れた。


「これのことかい山下青年」
「それ以外になにがあるのよ姉ちゃん」
「例えば私とか」
「どうしたの私は鳥になりたいとか思っちゃうお年頃なの」
「もしそうだったらどうするの」
「全身の筋肉をすべて使って笑い転げる」
なるほどそれは是非見てみたいが生憎と哺乳類から逸脱した存在になりたい訳じゃない。


くだらない話をくりひろげるホモサピエンス二体をよそに哀れな紙飛行機はただ沈黙を続けていた。
なんどもなんども両の手でぐしゃぐしゃに甚振るように扱わないとこんなシワはつかないだろう。
一体どんな感情の嵐によってこの紙片は被害をこうむったのか私には分からない。


ただ、中身が中身なだけにきっとフクザツでセンサイな事情があったにちがいない。
紙片の正体を知っている私は勝手にそんな想像をして遊びながら、表では至って平静な顔を形作るようつとめていた。
こんな男に中身を知られては元の持ち主も浮かばれない。(――これはただの言い訳でしかなかったが。)


そういう理由で私は未だに離れようとしないこのあほんだらには情報を開示しないことに決めていた。
「やっぱり飛ばないかなあ」、などと言ってみせながら指でつまんだまま紙飛行機をひらひら揺らす。
「どしたのソレ」
「拾った、ヤツを折ってみたんだけどねえ」
きっと飛ばないね、と付け足して。


――少し丸みのある、きれいな文字だった。
緊張しながら書いていたはずだ。そうでなければあんなに整った並び方はしていないだろうから。
ゴミ箱に捨てられていた便箋には読んでいるこっちが恥ずかしくなるくらい、まっすぐなことばに満ち溢れていた。


これほどひたむきな手紙がどうしてああも無残に捨てられていたのか、
その過程をいくつか考えてみるもののそれは全部私の根拠に乏しい推理でしかなく、真相は闇の中だ。
分かったのはそれがいわゆるスキナヒトに宛てた手紙であることと、その、宛て先。


「飛ばしてみれば?」
なにも知らないやまっちはいつもどおり軽い。
「もしかしたら飛ぶかもしれないじゃないそう言って彼の手が私のつくった紙飛行機に伸びてきたから、奪い取られるよりも先に私は、握りつぶした。


「拾いにいくのがめんどい」
「とってもものぐさと取るべきか飛ばした後で拾いにいくまじめさを評価するべきか判断に悩むね、おねーちゃん」
級友のことばをきれいに無視して代わりに肘鉄をお見舞いしてやると、大げさに呻いて彼は跪いた。
見下ろしながら、思う。こんな男だ、と。


こんな男に、君の気持ちが通じるとは思えない。
もし君自身の手でこれを捨てたのなら、それは賢明な判断だった。
こんな男なんだ。人の気も知らないで、べたべたとひっついてきて、姉だなどとふざけた呼び方をして。
こんな男に気持ちを伝えたところで、……相応の重さを、この男は返すのだろうか。


鳩尾にきまったのかうずくまったままのやまっちを置き去りにして、私は階下にもどるべく扉に手をかける。
手のなかに収まったままだった誰かの恋文はポケットにつっこんだ。
紙飛行機を飛ばさないために並べ立てた言い訳の滑稽さを私は知っていたので、一刻も早くこの男のまえから逃げておきたかった。


「いっそのこと、」
ギイイ、と耳に痛い音を立てたドアに紛れて、呟いてみる。
「おとせるものならどれだけよかったことか」
案の定、背後の男には聞こえていないらしかった。
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
部屋の入口を振り返ると、妹がアイスをくわえてそれを手にしていた。


「汚い手で触んないでよ」
思わず不機嫌な声が出たが、妹は気にした様子もなく
「だいじょうぶだよ、キレイキレイ」
と、へらへら笑った。


それは、割り箸と輪ゴムとで組み上げられた飛行機だった。
私の机にはその残骸や失敗作達がそのままになっている。


夏も近い六月、自由研究がある訳でも無し、どうしてこんな物を作ったかと言えば『飛び』たいからだ。


「姉ちゃんもいじっぱりだよねぇ、作り方の本とか見れば良いじゃん?」
妹が笑う。
器用な彼女には解らないだろう、不器用な私なりのプライドというものが。
「それじゃ意味無いの」


「なんだっけ、約束したんだっけ?」
毎年、私はこの季節になるとこうして飛行機を作る。
「うん、約束したから」
高校に上がったばかりの頃、『飛んで』行った友達との約束の為に。


三年前のことだ。その友達は高校に入ってからすぐに仲良くなった子で、それからいつも一緒だった。
もうしばらく長く過ごしていれば、レズ疑惑が立ちそうな程、一緒だった。


彼女は酷く情緒が不安定で、私が知らない子と一緒にいるだけで
「私のこと嫌いになったの?」
と何度も聞いて来るような子だった。私も地元の友達がいない高校で、寂しかったのだと思う。
私たちはいわゆる共依存の関係になりつつあった。


彼女は空が好きで、手先がとても器用だった。
私にはどうやって折ったのか解らないような、複雑な折り方で紙飛行機を作っては飛ばしていた。
けれど、所詮紙で出来たものだから、風の強い日なんかは行方が解らなくなって、それでまた落ち込んでいた。


まぁ、ここまで言えば、誰でも解ると思う。ありがちな携帯小説のようにその子は死んだ。


元々情緒不安定だった彼女は、高校に上がるまでに何度か自殺未遂をしていたそうだ。
ふわふわしたその性格から、中々友達が出来ず、仲良くなった相手は私のように共依存の関係になるか、気味悪がって離れていったそうだ。


彼女の両親は言っていた。
「あの子はまるで地に足がついていないようだったから」
だから『飛んで』行ってしまったのだろう、と。


両親宛の遺書とは別に、私に宛てた手紙があった。
それを受け取った私は、絶句した。悲しかったり、気味が悪かったりした訳ではない。
その封筒の中に入っていた手紙に、呆れたのだ。


封筒の中には真っ青な画用紙で折られた紙飛行機が入っていた。
それを開いた真ん中にただ一言、彼女の言葉が遺されていた。


「あなたと居ても飛べなかった」


先に私は彼女との関係を共依存の『ようだ』と例えたが、彼女は私に依存していた訳ではないのだ。
『飛び』たかった彼女は、私と一緒にいることで地を蹴ることが出来そうだったから、一緒に居たのだ。そして、それは叶わなかった。


依存していたのは私だけだったのだ。
ふわふわと地に足がつかない彼女を、地上につなぎ止めていられたような、そういう気になっていただけ。
彼女が何を思って死んだのかは解らないけれど、望む結果には成らなかったのだ。そう思った時あまりに馬鹿らしくて、私はそのまま紙飛行機を捨てようとした。


しかしどうせなら、彼女の遺書を空に飛ばしてやろう、と思ったのだ。
一度開いてぐしゃぐしゃにしてしまった画用紙を、もう一度折り畳んで、空に投げた。
ぐらり、とバランスを崩したのだと解る前にそれは私の顔面に舞い戻った。


「で、それってどこが約束なん?」
溶けたアイスを食べ切った妹に言われ、恥ずかしいながらも答える。
「あの子はまだ飛べてないの。だから、飛ばしてさよならしたくて」
「約束してないじゃん」
「…気持ち的な問題よ」
だから話したくなかったのだ。妹の手から飛行機を取り上げてゴムの強度を確認する。


手先の器用な彼女がやっていたような紙飛行機を折ることは出来ない。
もっと高く、遠く、そう思っているうちによく解らない、自己流の飛行機を作るようになっていた。
三年目、今日が彼女の命日だった。
「…飛ぶの?それ」
妹が言う。
「…飛ばないって決まった訳じゃないもん」
飛行機を、窓から飛ばす。


割り箸の飛行機は、また、飛ぶこともせずにただ落ちていった。
彼女が作った紙飛行機にすら及ばないそれは、未だ私自身が彼女が『飛んで』行ってしまったことを認められていないという、何よりの証明にも思えた。
地に足が着いているのではなく、私は、地に縛り付けられているだけなのだ。 
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってるの?」
「姉ちゃんヤクきめたらなんぼでもとべるさかいなー」 
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってるの?」
「分からない」
「分からないって」 
姉はもう三日も目の前に横たわる巨大な機械をいじり続けている。
僕たちがこの島にやってくるときに乗っていた、そして今は見る影もなく、ほとんどばらばらになった飛行機の残骸だ。


もっとも、僕たち十人がこの島にやってきたのは一年も前の話だ。
なにせ突然の事故だったからよく覚えていない。
身体が突然揺さぶられたかと思うと、次の瞬間には前の席に座っていた親父が吹き飛んで見えなくなっていた。


なんとか生き残れた僕たちは救助を待った。待って、待って、待ち続けた。 
だが、空には一片の飛行機雲も、海には一音の汽笛さえも聞こえてこなかった。


無理もない。ここはとんでもなく航路から外れたちっぽけな無人島だ。 5か月が経つ頃、僕らは救助を待つことをあきらめた。


僕たちは島で生活する道を選んだ。幸いにも、島には小さいけれど水をたたえた湖があった。
遠浅の海岸では魚や貝がよく獲れた。するべきことはいくらでもあった。


僕らは初めのうちこそ戸惑っていたが、いったん島での生活に慣れてみると意外なほどに暮らしやすいことに気がついた。
チョコやクッキーみたいなお菓子は手に入らないけれど、食べ物には不自由しなかった。魚に飽きれば森に入り、動物を捕まえさえすればよかった。
獰猛な肉食獣も見かけたことがない。


僕らはただ、大昔どこかの洞窟に住んでいた原始人みたいに獲物を追いかけて、火を焚いて、毎晩のように宴を開いていればよかった。


その日も僕たちは飲めや歌え屋の宴会を開いていた。
もちろん酒などないから飲んでいたのは島でとれたフルーツのジュース。
だけれども皆が皆異常なほどはしゃいでいた。用意した肉も、魚も、果物も食べつくした。


食べるものが無くなれば誰かが歌って踊りだす。
聞いたこともない歌だったが手足を動かしてひたすら踊った。笑顔が絶えなかった。


途中で足がもつれて転んだ。
「亮平、大丈夫?」
姉ちゃんが駆け寄ってきて、僕を助け起こした。
「うんちょっと疲れただけ」僕ははにかんで見せた。 
「弟が疲れているみたいなんで、早めに休みますね」
姉はそう言って僕の肩を抱えてテントへ歩き出した。


肩を組みながら姉が話しかけてきた。 
「亮平」
「ん?」
「この島どう思う?」
僕はちょっとだけ考えて、こう言った。
「天国みたいな場所だよ。食べ物はいっぱいあるし、毎日皆で浜辺に寝そべって、延々と話ができる。桃源郷だよ」 
それを聞いた姉の目がちょっとだけ光ったことに、僕は気付かなかった。


その翌日からだ。姉が飛行機の残骸の修理を始めたのは。 
「姉ちゃん、ホントに飛ぶと思ってんの?」 
「分からない」
姉は手を休めることなく動かしながらそう言った。
「分からないって」 
僕はちょっと逡巡して、こう言った。
「そんなん意味ないじゃん。やめようよ。無駄なこと。」 
姉が顔をあげた。


「あたしだって分かってるよ。一年間も野ざらしにされてたんだよ、そんな飛行機飛ぶわけないって」
「じゃあなんで」
「いやなんだよ、あきらめるのが」 


「あの宴会の時の、皆の顔を見た?思いっきり馬鹿みたいにはしゃいじゃって。
 これでもか、これでもか、ってはしゃいじゃって。皆も、ホントは島を出たいんだよ。
 出て帰りたいんだよ。」 
僕は言葉に詰まった。あの日の、あの時の皆の顔を思い浮かべる。


「あたしは大嫌いなんだよ、そういうふうに諦めるのが! 
 何が何でも、亮平と、皆と一緒に泳いでだって帰ってやるわよ」 
姉はそう言って飛行機の部品を集め始めた。


その日から僕は姉を手伝い始めた。別にこの飛行機が飛ぶと信じて手伝ったわけじゃない。
ただ何となく、何かをしなければいけない気もちが、僕の中にあった。 
野ざらしになっていた部品を集めては元の場所に設置する。ただそれだけだけど、確かな仕事だった。


僕らは初めのうちこそ戸惑っていたが、いったん慣れてみると作業はとんとん拍子で進んだ。
時々事故で死んだ人達の骨や、遺品が出てくる。
そういうものに驚いたり、気味悪がっていたけれど、僕らはそれを深い穴を掘って埋めた。
埋めた遺品の上にはしっかりと土をかぶせた。


「ここに立派な墓石でもおいてあげるといいんだけど」
「二人じゃ、無理だよね」
姉が苦笑いして言った。 
「石ならあっちにでっけえ大理石があったぞ」
驚いて振り向く。十人のうちの一人が、こっちを向いて笑っていた。


仲間は少しずつ増えていった。
僕と姉さんの二人が長いこと進めていたおかげで飛行機の作業はほとんど終わっていたが、二人だけでは墓石は運べない。
全員で力を合わせて墓石を運び、犠牲者を弔った晩、僕は確かに皆の気持ちが何か変わったことを感じた。
生きて、確実にこの無人島を出ると言う動き。


実際に島を出ることになるのはたぶんまだずっと先のことだろう。
今は力を合わせて筏を作っている段階だ。 
-だけれども、きっと、大丈夫。
諦めさえしなければ、壊れた飛行機だっていつか空を飛ぶのだ。 
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」


そう口にしたのは弟だった。姉と弟の前に転がっているのは傷だらけの大男だ。


尻からは覚せい剤反応が出ている。どうやらこの男はいわゆるシャブ中と言われる類のようだ。


姉はおもむろにポケットからカブト虫を取り出し弟を見つめ言った。
「もちろんこの程度でトぶわけがないことは知っているわ」 
弟は姉がとった行動に戦慄を覚えた。


ズボッッ!


すさまじい音が部屋に鳴り響いた。 例えるならまるで「プロゴルファー猿」でホールインワンを決めた時のような擬音のようだった。


「んんんん゛んーーーーーーーー!!」 男の野太い悲鳴が日本中に響き渡るようだった。 弟は目の前の光景に耐えられず目をそらしている。


大男は今まで散々村人達に対して悪行をはたらいていた。 しかしそれを考慮してもこの仕打ちはあまりにも酷いと言えるものであった。


「Oh…crazy…」 屋根裏から妙な声が聞こえた。 その場の全員の体が一瞬強張る。 が、直ぐに姉が緊張した空気を破った。 弾かれるように竹槍を持ち出し声が洩れた場所を的確に突いた。


(未完)
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
「飛んでるのはアンタのアタマでしょ」
俺は歯噛みした。ここに城を構えてからもう3年経つが、食事を届ける母の足音に気付かなかった事など今まで一度もなかった。
「私は姉ちゃんなんて生んだ覚えはないんだけどねー」
母の言葉が刃物となって俺に飛んでくる。
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
「飛ぶ!絶対!」
そう言って窓から飛び降りた姉の行方は未だに知れない。
警察は捜索を続けているが、もう無駄だろう。私は人類初の独力飛行に成功した人間の妹として、この事を一生胸に秘めておくつもりだ。
今でも思い出す。
姉の鍛え上げられた大胸筋を。
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃん、こんなんで飛ぶと思ってんの?」
僕と姉は同じ会社に勤めている。彼女は悪戯好きで、よく同僚のコーヒーをココアとすり変えたりしていた。
姉の悪戯はショボい! 僕は手本を見せるため、課長の前へ歩み寄るとコーヒーに醤油をたらした。     
翌日、僕のクビが飛んだ。
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top


「姉ちゃん、こんなんで飛ぶと思ってんの?」
僕の姉はかなりのヤンキーだった。連日夜に帰ってきて、テンションが高く親の言う事も聞かずテンションが高い。
そんな姉でも僕は大好きだ。
なので、今度庭で栽培した物を粉末にして彼女にプレz        ダメ、ゼッタイ
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」 
「ボンバヘッ」 
「え」 
「もっえだすよーなーあっついーたまーしー!」 
「ボンバヘッボッボッボボンバヘッ!!」 
「無茶しってしったー本当のおれーをー!」 
「ボンバヘッ!!」
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
※ツイート数オーパー


「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」 
思わず口に出しては見たが、そんなことで目の前に展開されてしまっている現実は変化しない。
「ヘリは飛ぶもんだ」と勝ち誇った顔で笑う姉ちゃんはそれはそれは自信満々のようだが、問題はそこではない。
このヘリを誰がどうやって作ったかということだ。


そりゃあ工業大国日本に住んでれば、安く部品をかき集めて機械を作る、なんてことはもちろん必ずしも不可能じゃない。
きちんと知識があれば、空を飛ぶような簡単な機械だって作れるといえば作れるだろう。
でも、これはもう、完全にヘリ。問答無用でヘリ。


それに・・・少し心得があれば分かる。
ジャンクじゃない。どう考えたって卸したてピカピカの専用部品だ。
何なら今すぐにでも風吹き荒れる雪山に救助活動に行ったって問題ないような、そんなヘリ。
必要経費をちょっと考えたくない。


「おかしいから」
「なにが?」
「ヘリじゃん」
「ヘリだよ」
「むしろヘリなの?」
「ヘリじゃなかったら何に見える?」
「・・・ヘリ」
「じゃあヘリでええやん」
「・・・うん」 
・・・・・・いや、うんじゃないな。 
「うんじゃないよ」


「まさか作ったんじゃないよね」
「そんなまさか」
そりゃそうか。プロペラ機械のデザインを僕が手直しするくらいだから、設計組むなんて夢のまた夢か。
「なんか、起きたらあった」
「はぁ?」 
それこそどういうことだ。庭先で気付かれずに着地するとか。ありえん。


というか・・・よくよく見れば・・・ 
「・・・小さい・・・」
「ん?」
「小さすぎるこのヘリ。それこそ飛ぶと思ってんのってくらい」  
ヘリは通常せまい場所に出来る限り入り込んで飛べるようにできてるとはいえ、こんなちょっとした小型車みたいな大きさのヘリは作れないはず。


機体の表面を軽くなでて回る。
叩けば中で響く音・・・相当軽い材質だ。耐久度大丈夫なのかこれ。
エンジンまわりは下手に触れないから操縦席を見てみないと・・・ 
「なんだかんだ言って興味津々やん」
「うっさい、気になったら気になるんだよ」 
がちゃり。ドアにロックはかかってなかった。


さすがに操縦系とかはあんまり詳しくない・・・けど、見たことがあるような感じ。
多分、操縦系は大して特別なものじゃないんだろうな。
燃料メーターはフル。
(本物ならマジで飛ぶってことか・・・?)メーターから眼をそらした瞬間、小さく書かれた表記に目を奪われた


『  2038   MAID IN JAPAN  』


「・・・・・・・・・は?」
 2038年日本製。眼をこすろうが頬をつねろうが2038年日本製。
「・・・いやいやいやいや、なにをばかな」 
一瞬取り乱した自分をちょっと恥じる。
文字だけなら別に何とでも書けるじゃないか。
アホか。


しかし、燃料メーター。こっちは問題だ。
何故なら、今フル表示ってことは、こいつは飛んでここに現れたワケじゃないってことになる。
輸送するにせよ、ここで組み立てるにせよ、一夜の間に気付かれずにそれを達成するなんて現実的にはちょっと考えられない。
ますます謎が増えてしまった。


「くそ、何だこの手の込んだイタズラ・・・」
そもそも何でうちにヘリなんだよ。わけがわからない。
ていうかメイドインジャパンの綴り間違ってる。頭が良いのか悪いのか。
「なんかあったー」
「ん?」
いつのまにか反対側の助手ドアから姉ちゃんが入ってきてる。手には・・・封筒?
「親展って書いてる」


「進展?」 
知り合いの犯行なの?バカなの?死ぬの? 
「とりあえず開けてみようず!」
「みようずて」 
しかし読まないことには始まらないことには賛成。 
「えーと・・・なにこれ、新聞の切り抜き?」
「と、手紙だな」 
姉ちゃんが手紙のほうを持ってったので、先に新聞に目を通すことにする。


「途中途中にじんでるな・・・」
ずいぶん古い新聞のようだ 
『 ・・・小型隕石の落下によって、家屋数軒に及ぶ被害が・・・・・・空調査衛星に誤作動があっ・・・とが判明・・・・・・による死亡者は2・・・・・・』 
「・・・隕石が家屋に落下・・・大変な事故だな」 
日付は・・・・・・


「・・・・・・・・・んなアホな・・・・・・」 
眼がしばしばする。なんか頭がちょっと白くなったみたいな。
だって、そんなまさか。これは・・・・・・・・・・・・明日の、新聞だ。 


待て。待て。信じたくはない。信じたくはないが。ないが、もし本当だとすると。
隕石?どこに?場所・・・場所は・・・ 
「ねー、そっちなんだったん?」 
びくり、として振り向く。姉ちゃんが手紙を読み終わったようだ。
「こっちはなんか、途中まで変な仕事の書類だったんだけど、途中で変なのが」


「なんか、あんたの名前で、『すぐにそっからどうにか飛べ』ってさ」


白かった頭がもっともっと完全に白くなって、一瞬後には驚くほどクリアになった。
とにかく姉ちゃんを無理やり押し込んでドアを閉めて、シートベルトを付ける。
キョトンとすんな、こっち見んな気が散る。
『どうにか』ってことはお見通しか、そりゃヘリ飛ばす技術なんかないよ当たり前だよ・・・!!


(新聞の日付は明日。)キーは刺さってた。(詳しい事まで判明してる。)燃料は確認済み。
(ってことは事件は今日。)ご丁寧に操縦桿には用途名が記載されている。(2038年日本製。)
キー、アクセル、ハンドル、ほぼ平行同時・・・!!(時間を飛ぶのは車じゃなかったのかドク・・・!!) 
点火。


不思議な浮遊感。後頭部から紐で釣られたような感覚。ふわり、という感じじゃない。くい、と。
数秒間それは続いて、やがて無くなったころには、ヘリの足は別れの名残りを惜しむように少しずつ、少しずつ、重力のくびきから解放されていく。
・・・・・・はは・・・ほんとうにとんでやがる、こいつ。


姉ちゃんは絶句してた。最初はマジで飛んでることにビビッてるのかとも思ったけど、どうやら違う。
上を見ている。・・・・・・そうか、新聞まだ見てなかったもんな。
ぼくはもう見ないでも分かっちゃってるけど。
・・・一瞬、空が影る。だんだん、音が近づいてくる。ぼくはハンドルを横へ切った。


・・・そうして。ぼくたちは、もうちょっと飛ぶこともないかと思ってた空の上。
真っ逆さまに落ちて行く『違う未来』と、すれ違った。


「・・・・・・・・・みんな出掛けてたのが不幸中の幸いだったんだ」
「・・・そうだねぇ」 
ヘリを降ろしながら、数分前まで我が家だった廃屋を見る。なんというか、本当にキレイに真上から行ったなぁ。
・・・・・・・・・保険下りんのかなぁ、隕石って。


「・・・このヘリも、あんたが作ったんだね多分」
「ん?なんでさ?」
「ほら、『メイド』が間違ってる。これ、あんたがたまにやる間違い」
「・・・あー・・・」 
本当だ。そうだった。たまにやらかすんだった、これ。
大人になったら直っててほしかった・・・ダメだったか、僕よ・・・


「・・・でも、じゃあ、僕はもうちょっと頑張らないとな」
「ん?」
「このヘリが来たってことは、過去に物を送れるってことだ。じゃあ、次はこれを参考にもうちょっと改良しないといけないよ」
「へー、どんなふうに」
「そうだな・・・」  
未来の僕よ。住処がなくなったらお前も困ったろう?だからな、


「・・・隕石を受け止められるヘリ、かな」  
あと、メイドインジャパンを正しく書ける自分も。
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
「姉さんが今までうそを言ったことがあった?」
「あったよ」
「姉さんがやる!っていってできなかったことなんてあった?」
「あっただろ」
「姉さんが一回でも物事をあきらめたことがある?」
「あるだろ・・・」
「・・・飛びたくないの?」
「・・・飛びたい」


「じゃあ飛ぶよ!いい?」
「・・・今までおれが姉さんについていかなかったことなんて無かっただろ・・・」
「よし!いい弟だ!」
そうやっておれたちは この青くて青くてたまらない空を 二人でもっと青く描いた・・・


【キレイEND】

そうやっておれたちは この青くて青くてたまらない空を 二人でもっと青く描いた・・・
空は青く おれたちも青く ただ翼だけが白く 一人前なのがうそみたいに照れくさいのは
姉さんが手を握っているから そのせいだ 
「一人前の天使の約束、姉ちゃんは覚えてる?」


【あれなEND】
ふたりでやったお絵かきは いつもいつも青色ばかり 
そうやっているからすぐになくなっちゃう 好きな色も 時間だってそうだった  
最後に二人の笑顔を描こう だけどもう色が無い 
仕方ないから余った「赤」で 二人の笑顔を描きました
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
「飛ばなくてもいいんだよ、こんなもん」
姉の作った姐曰く紙飛行機は僕が今まで見てきた紙飛行機とは一線を画していた。
多分こいつを飛ばしたところでどこにもとばない。多分後ろにもいかない。まっさかさまに落ちるだけだろう。


だって紙飛行機というより棒に小さい羽が生えたような代物だ。
多分紙飛行機を折ったのではなく適当に折った物を紙飛行機を言い張っているだけだろう。
姉はそのまま紙飛行機を窓の外に飛ばした、というよりブン投げた。
そのまま紙飛行機は意外なことに風に乗り、家の裏の河川敷に向かって飛んでった。


オイオイどうするんだアレ。僕は知っている。
あの紙飛行機――三者面談の案内を姉は明後日に出さなきゃいけないということを。
今日も父さんも母さんも帰ってくるのは夜の12時を回るだろう。
僕らはとっくに布団の中だ。姉は紙飛行機を見届けた後そのまま机に突っ伏した。
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
「わかんない。でも、このままだと可愛そうじゃない。」
例えば足の折れた犬、巣から落ちた雛。姉の周囲にはそういうものがよく集まる。
家に帰れなくなった生き物達は皆、やたらめったら姉に頼るのだ。


そしてげに慈悲深き姉はそういうものを片っ端らから助ける。その昔、いわゆる反抗期
にかかった僕は姉を「偽善者」とか、よく分からない理屈と共に罵ったこともあった。
でも姉は「過程はともかく、結果さ、助かってるんならいいじゃない」と笑った。


でも、僕は知ってる。というか、最近知った。姉は偽善者ですらない。
「酷いと思わない、翼が両方もがれてるなんてさ。」
「さあ…本人的には、別にいらなかったのかもしれないよ。」
「そんなわけないよ。空を飛べるってすごいことだもの。」


僕は白い大きな翼に目を落とした。本体についていないそれは、なんだか滑稽だ。
「素人がさ、そんなん縫い付けたって、無駄だって。」
「でもさ、病院に連れていったって、きっとくっつける努力もしてもらえないよ。」
「そいつきっとそんな努力求めてない。」
針を動かす姉の手が止まる。


「翼があるものにとってはさ、きっと翼をもがれるのって、私達が足をもがれるみたいな
モノなんだと思うの」
「……」
「もし、どちらにしても死ぬのなら、最後に歩きたいって思わない?それといっしょでさ、最後に飛びたいって思うんじゃないかな。」


「天使は天にに帰りたいって思うはずだもの。」


例えば足の折れた犬、巣から落ちた雛。姉の周囲にはそういうものがよく集まる。
家に帰れなくなった生き物達は皆、やたらめったら姉に頼るのだ。
だってそこに居るのは姉だから。


姉が慈悲深く助けた鳥達の羽が、目の前に居る天使とやらに縫い付けられていく。
ポケットには携帯電話がある。電話をかけるのは容易だけど、まあ。
「奇跡、起こるかもしれないじゃない。」


そういう姉の笑顔は嫌いじゃないし、姉の彼氏は金髪で外人みたいな顔してるし、あらゆる女性に平等に愛を振りまいていたし、
実際奇跡が起こる可能性、無くもないか。と、すぐに出来るであろう血溜まりの処理方法に思いをはせた。
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
某ツイッターにて、私のフォロワーさんの弟の

「姉ちゃんこんなんで飛ぶとおもってんの?」

というセリフがツボに入り、悪乗りで

【文章系の方にお題】
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」という台詞から始まるショートショートを20ツイート以内で書き上げなさい

といったら予想外に多くの人が書いてくださったのでまとめてみました。


掲載は許可をいただいたもののみ。ツイッターに投稿したものから訂正は不可(誤字脱字などの細かい修正は可)
で、掲載しております。
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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