上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
僕は尋ねる。
「飛べなかったらどうする?」
彼女はいたずらっぽく笑う。僕は小高い丘の上で、同じ問いを何度も彼女にぶつけていた。
僕らは明日、空に旅立つ運命にあった。それは僕らにとって希望に満ちあふれた出発であり、同時に一度しか無いチャンスだった。


「私はね、できるだけ高く飛びたいの!そうしてこの丘をとびだして、どんどん遠くへ飛んでって、そこで新しい生活を始めるの!」
彼女は嬉しそうに将来を語った。僕はうなずき、彼女の話を静かに聞いていた。
「…ねぇ、まだ不安なの?」
ふいに、彼女が尋ねてきた。


僕はそれを認めたくはなかった。周りは皆、旅立つことを楽しみにしていた。
僕一人だけが飛び立つことを怖がっていると思っていた。彼女は僕の答えを聞きたそうににやにやしている。
僕が黙り込んでしまったのを見て、周りの仲間たちまでが僕に注目し始めた。


「ふーん、へーえ、ほーお。答えられないということは、君はこのままここで一生を終えるつもりかな?それとも、私なんかに自分の理想を語る気はさらさらない、ということかな?」
彼女のその態度が腹立たしく思えた。生まれた時から一緒だったんだ。僕のことは分かっているだろう!


「なんでそんな能天気なんだよ。お前ら全員ワケ分かんねぇよ」
僕の声は震えていた。
「…だって、一人で飛んだことなんか今まで一度もないじゃないか!飛び立てずに落っこちて、そこで終わるかもしれないじゃないか!なのになんだよ!?お前ら全員楽観視しすぎだろう!!」
周りはしんと静まり返った。


姉ちゃんの笑いが消えた。
「…あんた、何言ってんの?」
もう彼女は笑っていない。しまった。地雷を踏んでしまったか。僕の体が強ばった。


「あたしだって怖いよ」
誰かが呟いた。
「俺もだよ」
「ボクだってそうさ」
周りの声が次第に多くなってきた。姉ちゃんがほほえんだ。
「怖いのはみんな同じに決まってるじゃない。でも行かなきゃいけない。なら一人で行くよりみんなで行く方が怖くないでしょ?皆で飛べるように励まし合ってるんじゃない」


僕はハッとした。
僕の周りの奴らだって条件は同じだったんだ。
なのに皆不安を感じていないふりをしてた。
僕だけが不安に囚われて、おいてけぼりを喰らったと思いこんでいたんだ。


姉ちゃんは続けた。
「誰かがずっと怖がってたら、皆も怖がって飛べなくなっちゃうでしょ?私たちはここで一緒に生まれ育ったの。…ここの皆なんて、もう兄弟じゃない。でしょ?」
いつのまにか空は明るくなっていた。僕は自分の体を見つめた。
ちっぽけな体だけど、どこまでも飛んでいけそうな気がした。


外は柔らかな春の日差し。風はおだやか。うってつけのフライト日和。
あとはちょうどいい風が来るのを待つだk…
「ぶちっ!」


「ママー!みてみてー!たんぽぽ!」
「ふわふわしてるねぇ。ふーっ!ってしてごらん」
「うん!」 ふーっ。 僕ら -タンポポの種子- は青空に向かって飛んでいった。  
『行ってきます!』
スポンサーサイト
2010.07.15 Thu l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://hinasiba.blog86.fc2.com/tb.php/18-9044c2b4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。