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「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
背後から小馬鹿にしたような声が聞こえた。午前2時。高層マンションの屋上。
周りの夜景はまるで宇宙。振り返るとおとなしそうな青年が立っていた。彼の手には包丁が握られていた。


この屋上には私と彼の二人しかいない。イコール、助けなど絶対に来ない。
この状況から脱出するためには「彼をねじ伏せる」「屋上から飛び降りる」の2種類しかなかった。
だが投身自殺をするつもりは毛頭から無い。
私はあらかじめこのマンションにクライミング用のワイヤーを隠していた…はずだった。


「姉ちゃんが探してるのってコレかな?」
青年が切り刻まれたワイヤーを放り投げた。
「…用意周到だね。こんなの隠してたって事は、よっぽど僕のことが憎いんだ?」
彼の目は狂気を帯びていた。
「言わなくたって分かってるよ。姉ちゃんは僕の事殺しに来たんでしょ?」


私はゆっくりと口を開いた。
「…やっぱりあなたが殺したのね?」
女の声が、私の台詞を続けた。
「私の親も、ペットも、友達も、あなたのお兄さんも…どうして?どうして私じゃなくて私の周りの人たちだったの?!」
つい感情がこもってしまった。全員、この青年が手にかけた犠牲者だった。


「……きだったから。」
青年の声がか細くなった。
「…は?」
私は聞き返した。
「姉ちゃんが好きだったからだよ!!!!」
青年は声を張り上げた。


「初めて会ったときから僕は姉ちゃんが大好きだった!何度も『好き』って言っただろ!?あれは本気だったんだ!なのに姉ちゃんは笑ってまともに取り合ってくれなかった!!…兄貴も、姉ちゃんの知り合いもジャマばかりしてさ。僕は姉ちゃんと2人だけでいたいのに…。殺したくもなるじゃん。違う?」


あまりに身勝手な主張に、私は茫然とした。その間に彼は私のすぐそばまで来ていた。
いつの間にか私は屋上の端に追い詰められていた。
「…姉ちゃん、そういえば今日は違う男の匂いがするね。」
静かな声が聞こえた瞬間、脇腹に包丁がねじ込まれ、激痛が走った。 ……今しかない。


私は彼の腕をつかみ、彼の身体を一気に床にたたきつけた。
そのまま彼の首元を抑え、全体重を掛けていく。脇腹の包丁が更に身体を抉る。
彼に殺された人たちもこんな痛みを感じたのだろうか…。
私は彼の耳元で最後の言葉をかけた。
「…彼女は『さよなら』と言ってましたよ。」


青年の死を確認した後、私はボイスチェンジャーを調整し直し、依頼主に電話をかけた。
「仕事、終わりましたよ。」
電話の向こうで『姉ちゃん』が息をのんだ。私は事務的に会話を続けた。
「報酬は後日指定した口座に振り込んで下さい。それでは。」
…さて、今回はどうやって飛ぼうか。
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2010.07.15 Thu l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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