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※ツイート数オーパー


「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」 
思わず口に出しては見たが、そんなことで目の前に展開されてしまっている現実は変化しない。
「ヘリは飛ぶもんだ」と勝ち誇った顔で笑う姉ちゃんはそれはそれは自信満々のようだが、問題はそこではない。
このヘリを誰がどうやって作ったかということだ。


そりゃあ工業大国日本に住んでれば、安く部品をかき集めて機械を作る、なんてことはもちろん必ずしも不可能じゃない。
きちんと知識があれば、空を飛ぶような簡単な機械だって作れるといえば作れるだろう。
でも、これはもう、完全にヘリ。問答無用でヘリ。


それに・・・少し心得があれば分かる。
ジャンクじゃない。どう考えたって卸したてピカピカの専用部品だ。
何なら今すぐにでも風吹き荒れる雪山に救助活動に行ったって問題ないような、そんなヘリ。
必要経費をちょっと考えたくない。


「おかしいから」
「なにが?」
「ヘリじゃん」
「ヘリだよ」
「むしろヘリなの?」
「ヘリじゃなかったら何に見える?」
「・・・ヘリ」
「じゃあヘリでええやん」
「・・・うん」 
・・・・・・いや、うんじゃないな。 
「うんじゃないよ」


「まさか作ったんじゃないよね」
「そんなまさか」
そりゃそうか。プロペラ機械のデザインを僕が手直しするくらいだから、設計組むなんて夢のまた夢か。
「なんか、起きたらあった」
「はぁ?」 
それこそどういうことだ。庭先で気付かれずに着地するとか。ありえん。


というか・・・よくよく見れば・・・ 
「・・・小さい・・・」
「ん?」
「小さすぎるこのヘリ。それこそ飛ぶと思ってんのってくらい」  
ヘリは通常せまい場所に出来る限り入り込んで飛べるようにできてるとはいえ、こんなちょっとした小型車みたいな大きさのヘリは作れないはず。


機体の表面を軽くなでて回る。
叩けば中で響く音・・・相当軽い材質だ。耐久度大丈夫なのかこれ。
エンジンまわりは下手に触れないから操縦席を見てみないと・・・ 
「なんだかんだ言って興味津々やん」
「うっさい、気になったら気になるんだよ」 
がちゃり。ドアにロックはかかってなかった。


さすがに操縦系とかはあんまり詳しくない・・・けど、見たことがあるような感じ。
多分、操縦系は大して特別なものじゃないんだろうな。
燃料メーターはフル。
(本物ならマジで飛ぶってことか・・・?)メーターから眼をそらした瞬間、小さく書かれた表記に目を奪われた


『  2038   MAID IN JAPAN  』


「・・・・・・・・・は?」
 2038年日本製。眼をこすろうが頬をつねろうが2038年日本製。
「・・・いやいやいやいや、なにをばかな」 
一瞬取り乱した自分をちょっと恥じる。
文字だけなら別に何とでも書けるじゃないか。
アホか。


しかし、燃料メーター。こっちは問題だ。
何故なら、今フル表示ってことは、こいつは飛んでここに現れたワケじゃないってことになる。
輸送するにせよ、ここで組み立てるにせよ、一夜の間に気付かれずにそれを達成するなんて現実的にはちょっと考えられない。
ますます謎が増えてしまった。


「くそ、何だこの手の込んだイタズラ・・・」
そもそも何でうちにヘリなんだよ。わけがわからない。
ていうかメイドインジャパンの綴り間違ってる。頭が良いのか悪いのか。
「なんかあったー」
「ん?」
いつのまにか反対側の助手ドアから姉ちゃんが入ってきてる。手には・・・封筒?
「親展って書いてる」


「進展?」 
知り合いの犯行なの?バカなの?死ぬの? 
「とりあえず開けてみようず!」
「みようずて」 
しかし読まないことには始まらないことには賛成。 
「えーと・・・なにこれ、新聞の切り抜き?」
「と、手紙だな」 
姉ちゃんが手紙のほうを持ってったので、先に新聞に目を通すことにする。


「途中途中にじんでるな・・・」
ずいぶん古い新聞のようだ 
『 ・・・小型隕石の落下によって、家屋数軒に及ぶ被害が・・・・・・空調査衛星に誤作動があっ・・・とが判明・・・・・・による死亡者は2・・・・・・』 
「・・・隕石が家屋に落下・・・大変な事故だな」 
日付は・・・・・・


「・・・・・・・・・んなアホな・・・・・・」 
眼がしばしばする。なんか頭がちょっと白くなったみたいな。
だって、そんなまさか。これは・・・・・・・・・・・・明日の、新聞だ。 


待て。待て。信じたくはない。信じたくはないが。ないが、もし本当だとすると。
隕石?どこに?場所・・・場所は・・・ 
「ねー、そっちなんだったん?」 
びくり、として振り向く。姉ちゃんが手紙を読み終わったようだ。
「こっちはなんか、途中まで変な仕事の書類だったんだけど、途中で変なのが」


「なんか、あんたの名前で、『すぐにそっからどうにか飛べ』ってさ」


白かった頭がもっともっと完全に白くなって、一瞬後には驚くほどクリアになった。
とにかく姉ちゃんを無理やり押し込んでドアを閉めて、シートベルトを付ける。
キョトンとすんな、こっち見んな気が散る。
『どうにか』ってことはお見通しか、そりゃヘリ飛ばす技術なんかないよ当たり前だよ・・・!!


(新聞の日付は明日。)キーは刺さってた。(詳しい事まで判明してる。)燃料は確認済み。
(ってことは事件は今日。)ご丁寧に操縦桿には用途名が記載されている。(2038年日本製。)
キー、アクセル、ハンドル、ほぼ平行同時・・・!!(時間を飛ぶのは車じゃなかったのかドク・・・!!) 
点火。


不思議な浮遊感。後頭部から紐で釣られたような感覚。ふわり、という感じじゃない。くい、と。
数秒間それは続いて、やがて無くなったころには、ヘリの足は別れの名残りを惜しむように少しずつ、少しずつ、重力のくびきから解放されていく。
・・・・・・はは・・・ほんとうにとんでやがる、こいつ。


姉ちゃんは絶句してた。最初はマジで飛んでることにビビッてるのかとも思ったけど、どうやら違う。
上を見ている。・・・・・・そうか、新聞まだ見てなかったもんな。
ぼくはもう見ないでも分かっちゃってるけど。
・・・一瞬、空が影る。だんだん、音が近づいてくる。ぼくはハンドルを横へ切った。


・・・そうして。ぼくたちは、もうちょっと飛ぶこともないかと思ってた空の上。
真っ逆さまに落ちて行く『違う未来』と、すれ違った。


「・・・・・・・・・みんな出掛けてたのが不幸中の幸いだったんだ」
「・・・そうだねぇ」 
ヘリを降ろしながら、数分前まで我が家だった廃屋を見る。なんというか、本当にキレイに真上から行ったなぁ。
・・・・・・・・・保険下りんのかなぁ、隕石って。


「・・・このヘリも、あんたが作ったんだね多分」
「ん?なんでさ?」
「ほら、『メイド』が間違ってる。これ、あんたがたまにやる間違い」
「・・・あー・・・」 
本当だ。そうだった。たまにやらかすんだった、これ。
大人になったら直っててほしかった・・・ダメだったか、僕よ・・・


「・・・でも、じゃあ、僕はもうちょっと頑張らないとな」
「ん?」
「このヘリが来たってことは、過去に物を送れるってことだ。じゃあ、次はこれを参考にもうちょっと改良しないといけないよ」
「へー、どんなふうに」
「そうだな・・・」  
未来の僕よ。住処がなくなったらお前も困ったろう?だからな、


「・・・隕石を受け止められるヘリ、かな」  
あと、メイドインジャパンを正しく書ける自分も。
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2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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