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「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
僕は尋ねる。
「飛べなかったらどうする?」
彼女はいたずらっぽく笑う。僕は小高い丘の上で、同じ問いを何度も彼女にぶつけていた。
僕らは明日、空に旅立つ運命にあった。それは僕らにとって希望に満ちあふれた出発であり、同時に一度しか無いチャンスだった。


「私はね、できるだけ高く飛びたいの!そうしてこの丘をとびだして、どんどん遠くへ飛んでって、そこで新しい生活を始めるの!」
彼女は嬉しそうに将来を語った。僕はうなずき、彼女の話を静かに聞いていた。
「…ねぇ、まだ不安なの?」
ふいに、彼女が尋ねてきた。


僕はそれを認めたくはなかった。周りは皆、旅立つことを楽しみにしていた。
僕一人だけが飛び立つことを怖がっていると思っていた。彼女は僕の答えを聞きたそうににやにやしている。
僕が黙り込んでしまったのを見て、周りの仲間たちまでが僕に注目し始めた。


「ふーん、へーえ、ほーお。答えられないということは、君はこのままここで一生を終えるつもりかな?それとも、私なんかに自分の理想を語る気はさらさらない、ということかな?」
彼女のその態度が腹立たしく思えた。生まれた時から一緒だったんだ。僕のことは分かっているだろう!


「なんでそんな能天気なんだよ。お前ら全員ワケ分かんねぇよ」
僕の声は震えていた。
「…だって、一人で飛んだことなんか今まで一度もないじゃないか!飛び立てずに落っこちて、そこで終わるかもしれないじゃないか!なのになんだよ!?お前ら全員楽観視しすぎだろう!!」
周りはしんと静まり返った。


姉ちゃんの笑いが消えた。
「…あんた、何言ってんの?」
もう彼女は笑っていない。しまった。地雷を踏んでしまったか。僕の体が強ばった。


「あたしだって怖いよ」
誰かが呟いた。
「俺もだよ」
「ボクだってそうさ」
周りの声が次第に多くなってきた。姉ちゃんがほほえんだ。
「怖いのはみんな同じに決まってるじゃない。でも行かなきゃいけない。なら一人で行くよりみんなで行く方が怖くないでしょ?皆で飛べるように励まし合ってるんじゃない」


僕はハッとした。
僕の周りの奴らだって条件は同じだったんだ。
なのに皆不安を感じていないふりをしてた。
僕だけが不安に囚われて、おいてけぼりを喰らったと思いこんでいたんだ。


姉ちゃんは続けた。
「誰かがずっと怖がってたら、皆も怖がって飛べなくなっちゃうでしょ?私たちはここで一緒に生まれ育ったの。…ここの皆なんて、もう兄弟じゃない。でしょ?」
いつのまにか空は明るくなっていた。僕は自分の体を見つめた。
ちっぽけな体だけど、どこまでも飛んでいけそうな気がした。


外は柔らかな春の日差し。風はおだやか。うってつけのフライト日和。
あとはちょうどいい風が来るのを待つだk…
「ぶちっ!」


「ママー!みてみてー!たんぽぽ!」
「ふわふわしてるねぇ。ふーっ!ってしてごらん」
「うん!」 ふーっ。 僕ら -タンポポの種子- は青空に向かって飛んでいった。  
『行ってきます!』
2010.07.15 Thu l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
「うるっさいな。飛べると思ってるからやってんでしょ」
「でも、もうかれこれ四日?同じことやって飛べてないよね」
「あんたには関係ないでしょ」


「くっそ、何で飛べないのコレ。何か間違ってんの…」
「…まだやってんの姉ちゃん」
「だからうるさい!!!ちょっと黙ってて。集中してるんだから。助走距離が足りないの…?タイミングが悪いの?両方?」


「姉ちゃんさあ、飛ぶためのどうぐ使わんの?」
「は?」
「ここ来る直前で貰わなかった?」
「え、何それ。知らない…」


「姉ちゃんちょい俺に貸して。……あのね、村出る前にここで長老に話し掛けるじゃん?そうするとね、貰えんの。ほれ、『飛翔の腕輪』ってやつ」
「あれえ……」
「で、それ装備してからね。飛んでみ」


「・・・・・・飛べた、ね」
「ね」


「ところでお前なんでコレ知ってんの」
「えっ」
「・・・・・・・私の知らないセーブデータがあるねえ…随分とレベルとプレイ時間が上の奴が…」
「あー。えーと」


「お前私がいない間にやったな?」
「なんのことかな」
「無断で私の引き出し漁ったな?」
「さあてね」
「おい私の目を見て話せ」
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
屋上の手すりに腕をあずけ、なんちゃって青春の1ページを満喫していた私に声をかけたのはクラスメイトのやまっち(10代男性)だ。
勘違いしないでいただきたいが姉ちゃんというのは私のアダナでしかなく、けしてこの男と血縁関係にあるわけではない。


ついでにいうとその珍妙な愛称もどきで呼ばれるようになったきっかけは腹立たしいことこの上ないので詳細を語りたくない。
だがしかしこの男と仲が悪いのかといえば否と言える程度の間柄というかぶっちゃけた話クラスメイトの中じゃ一番気が合う部類なんじゃねえの? と思える相手である。


だからこそ私は背中に全体重をかけてきてなおかつ肩ごしに手元を覗き込んでくるこの馬鹿に肘鉄をくらわせることなくそのまま青春ごっこを続けることができる。私の手のうちにはかわいそうなくらいシワシワの紙飛行機があるわけで、やまっちがコレを見た上で発言したのだということは容易に読み取れた。


「これのことかい山下青年」
「それ以外になにがあるのよ姉ちゃん」
「例えば私とか」
「どうしたの私は鳥になりたいとか思っちゃうお年頃なの」
「もしそうだったらどうするの」
「全身の筋肉をすべて使って笑い転げる」
なるほどそれは是非見てみたいが生憎と哺乳類から逸脱した存在になりたい訳じゃない。


くだらない話をくりひろげるホモサピエンス二体をよそに哀れな紙飛行機はただ沈黙を続けていた。
なんどもなんども両の手でぐしゃぐしゃに甚振るように扱わないとこんなシワはつかないだろう。
一体どんな感情の嵐によってこの紙片は被害をこうむったのか私には分からない。


ただ、中身が中身なだけにきっとフクザツでセンサイな事情があったにちがいない。
紙片の正体を知っている私は勝手にそんな想像をして遊びながら、表では至って平静な顔を形作るようつとめていた。
こんな男に中身を知られては元の持ち主も浮かばれない。(――これはただの言い訳でしかなかったが。)


そういう理由で私は未だに離れようとしないこのあほんだらには情報を開示しないことに決めていた。
「やっぱり飛ばないかなあ」、などと言ってみせながら指でつまんだまま紙飛行機をひらひら揺らす。
「どしたのソレ」
「拾った、ヤツを折ってみたんだけどねえ」
きっと飛ばないね、と付け足して。


――少し丸みのある、きれいな文字だった。
緊張しながら書いていたはずだ。そうでなければあんなに整った並び方はしていないだろうから。
ゴミ箱に捨てられていた便箋には読んでいるこっちが恥ずかしくなるくらい、まっすぐなことばに満ち溢れていた。


これほどひたむきな手紙がどうしてああも無残に捨てられていたのか、
その過程をいくつか考えてみるもののそれは全部私の根拠に乏しい推理でしかなく、真相は闇の中だ。
分かったのはそれがいわゆるスキナヒトに宛てた手紙であることと、その、宛て先。


「飛ばしてみれば?」
なにも知らないやまっちはいつもどおり軽い。
「もしかしたら飛ぶかもしれないじゃないそう言って彼の手が私のつくった紙飛行機に伸びてきたから、奪い取られるよりも先に私は、握りつぶした。


「拾いにいくのがめんどい」
「とってもものぐさと取るべきか飛ばした後で拾いにいくまじめさを評価するべきか判断に悩むね、おねーちゃん」
級友のことばをきれいに無視して代わりに肘鉄をお見舞いしてやると、大げさに呻いて彼は跪いた。
見下ろしながら、思う。こんな男だ、と。


こんな男に、君の気持ちが通じるとは思えない。
もし君自身の手でこれを捨てたのなら、それは賢明な判断だった。
こんな男なんだ。人の気も知らないで、べたべたとひっついてきて、姉だなどとふざけた呼び方をして。
こんな男に気持ちを伝えたところで、……相応の重さを、この男は返すのだろうか。


鳩尾にきまったのかうずくまったままのやまっちを置き去りにして、私は階下にもどるべく扉に手をかける。
手のなかに収まったままだった誰かの恋文はポケットにつっこんだ。
紙飛行機を飛ばさないために並べ立てた言い訳の滑稽さを私は知っていたので、一刻も早くこの男のまえから逃げておきたかった。


「いっそのこと、」
ギイイ、と耳に痛い音を立てたドアに紛れて、呟いてみる。
「おとせるものならどれだけよかったことか」
案の定、背後の男には聞こえていないらしかった。
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってんの?」
部屋の入口を振り返ると、妹がアイスをくわえてそれを手にしていた。


「汚い手で触んないでよ」
思わず不機嫌な声が出たが、妹は気にした様子もなく
「だいじょうぶだよ、キレイキレイ」
と、へらへら笑った。


それは、割り箸と輪ゴムとで組み上げられた飛行機だった。
私の机にはその残骸や失敗作達がそのままになっている。


夏も近い六月、自由研究がある訳でも無し、どうしてこんな物を作ったかと言えば『飛び』たいからだ。


「姉ちゃんもいじっぱりだよねぇ、作り方の本とか見れば良いじゃん?」
妹が笑う。
器用な彼女には解らないだろう、不器用な私なりのプライドというものが。
「それじゃ意味無いの」


「なんだっけ、約束したんだっけ?」
毎年、私はこの季節になるとこうして飛行機を作る。
「うん、約束したから」
高校に上がったばかりの頃、『飛んで』行った友達との約束の為に。


三年前のことだ。その友達は高校に入ってからすぐに仲良くなった子で、それからいつも一緒だった。
もうしばらく長く過ごしていれば、レズ疑惑が立ちそうな程、一緒だった。


彼女は酷く情緒が不安定で、私が知らない子と一緒にいるだけで
「私のこと嫌いになったの?」
と何度も聞いて来るような子だった。私も地元の友達がいない高校で、寂しかったのだと思う。
私たちはいわゆる共依存の関係になりつつあった。


彼女は空が好きで、手先がとても器用だった。
私にはどうやって折ったのか解らないような、複雑な折り方で紙飛行機を作っては飛ばしていた。
けれど、所詮紙で出来たものだから、風の強い日なんかは行方が解らなくなって、それでまた落ち込んでいた。


まぁ、ここまで言えば、誰でも解ると思う。ありがちな携帯小説のようにその子は死んだ。


元々情緒不安定だった彼女は、高校に上がるまでに何度か自殺未遂をしていたそうだ。
ふわふわしたその性格から、中々友達が出来ず、仲良くなった相手は私のように共依存の関係になるか、気味悪がって離れていったそうだ。


彼女の両親は言っていた。
「あの子はまるで地に足がついていないようだったから」
だから『飛んで』行ってしまったのだろう、と。


両親宛の遺書とは別に、私に宛てた手紙があった。
それを受け取った私は、絶句した。悲しかったり、気味が悪かったりした訳ではない。
その封筒の中に入っていた手紙に、呆れたのだ。


封筒の中には真っ青な画用紙で折られた紙飛行機が入っていた。
それを開いた真ん中にただ一言、彼女の言葉が遺されていた。


「あなたと居ても飛べなかった」


先に私は彼女との関係を共依存の『ようだ』と例えたが、彼女は私に依存していた訳ではないのだ。
『飛び』たかった彼女は、私と一緒にいることで地を蹴ることが出来そうだったから、一緒に居たのだ。そして、それは叶わなかった。


依存していたのは私だけだったのだ。
ふわふわと地に足がつかない彼女を、地上につなぎ止めていられたような、そういう気になっていただけ。
彼女が何を思って死んだのかは解らないけれど、望む結果には成らなかったのだ。そう思った時あまりに馬鹿らしくて、私はそのまま紙飛行機を捨てようとした。


しかしどうせなら、彼女の遺書を空に飛ばしてやろう、と思ったのだ。
一度開いてぐしゃぐしゃにしてしまった画用紙を、もう一度折り畳んで、空に投げた。
ぐらり、とバランスを崩したのだと解る前にそれは私の顔面に舞い戻った。


「で、それってどこが約束なん?」
溶けたアイスを食べ切った妹に言われ、恥ずかしいながらも答える。
「あの子はまだ飛べてないの。だから、飛ばしてさよならしたくて」
「約束してないじゃん」
「…気持ち的な問題よ」
だから話したくなかったのだ。妹の手から飛行機を取り上げてゴムの強度を確認する。


手先の器用な彼女がやっていたような紙飛行機を折ることは出来ない。
もっと高く、遠く、そう思っているうちによく解らない、自己流の飛行機を作るようになっていた。
三年目、今日が彼女の命日だった。
「…飛ぶの?それ」
妹が言う。
「…飛ばないって決まった訳じゃないもん」
飛行機を、窓から飛ばす。


割り箸の飛行機は、また、飛ぶこともせずにただ落ちていった。
彼女が作った紙飛行機にすら及ばないそれは、未だ私自身が彼女が『飛んで』行ってしまったことを認められていないという、何よりの証明にも思えた。
地に足が着いているのではなく、私は、地に縛り付けられているだけなのだ。 
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「姉ちゃんこんなんで飛ぶと思ってるの?」
「姉ちゃんヤクきめたらなんぼでもとべるさかいなー」 
2010.07.14 Wed l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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